フランキンセンスとミルラ ─ 年末の振り返りと手放しに寄り添う、聖なる香り

フランキンセンスとミルラ ─ 年末の振り返りと手放しに寄り添う、聖なる香り

年末が近づくと、フランキンセンスやミルラという香りを目にする機会が増えます。なぜ、この時期になると、これらの香りが注目されるのでしょうか。

それは、この二つの香りが、クリスマスという祝祭の背景にある物語と深く結びついているからです。

同時にこれらの香りは、歴史や象徴を読み解いていくと、一年の終わりと始まりという節目に、人が自分自身と静かに向き合う時間にふさわしい香りだと考えられます。

今回は、そうした背景がどこから生まれ、どのように受け継がれてきたのか。そして年末という時間の中で、これらの香りをどのように取り入れられるのかをご紹介します。

クリスマスの物語と「香り」の意味

新約聖書には、イエス・キリストの誕生の際、東方の博士たちが三つの贈り物を捧げたと記されています。

それが、黄金、フランキンセンス(乳香)、ミルラ(没薬) です。

黄金は、王への贈り物として分かりやすい象徴でした。では、なぜ残りの二つは「香り」だったのでしょうか。

それは古代において、香りが黄金に匹敵するほど価値あるものと考えられていたからです。

香りは、単なる嗜好品ではなく、

  • 祈りを天へ届けるもの
  • 神の存在を象徴するもの
  • 空間を清め、意識を切り替えるもの

として扱われてきたのです。

キリスト誕生という聖なる出来事に際し、これらの香りが捧げられたのは、「尊い存在に最高の敬意を表す」行為だったと考えられています。

だからこそこの香りは、クリスマスという節目の時期に、今もなお特別な意味をもって受け継がれています。


フランキンセンスとミルラとは?

キリスト誕生の際、捧げられた香りのフランキンセンスとミルラ。

どちらも樹木の樹脂から採れる天然の香りです。

木の幹に傷をつけると、樹液がにじみ出し、空気に触れてゆっくりと固まります。それを集め、乾燥させたものが、古代から香りとして使われてきました。

植物が自らを守るために生み出した樹脂。その香りには、自然と意識を内側へ向ける静けさがあります。

古代では神へと捧げられてきたこの香りは、現代では、自分自身へと立ち戻るための香りとしても受け取られるようになりました。

 

象徴から読み解く、二つの香りの意味

キリスト教神学では、三つの贈り物には象徴的な意味があると解釈されてきました。

黄金は、王としての象徴。
では、フランキンセンスとミルラという「香り」は、何を意味するものだったのでしょうか。

これらの意味を読み解いていくと、フランキンセンスとミルラは、一年の終わりに人が自然と向き合うテーマと重なってきます。


フランキンセンス ── 自分自身とつながり、内なる声を聴く香り

フランキンセンスは、祈りや神殿で焚かれる香りとして、神性や、目に見えないものとつながることを象徴してきました。

古代においてそれは、場を清め、心を鎮め、意識を内側へと向けるための香りでした。
何かを足すためではなく、本質へと近づくための香りだったと言えるでしょう。

澄んだ空気のような清らかさと透明感、ほのかにシトラスを思わせる明るさを持つ香り立ちは、呼吸が深まり、心が静かに整っていく感覚をもたらします。

一年を振り返り、本当はどう感じていたのか。
何を大切にしてきたのか。
来年は、どんな在り方でいたいのか。

フランキンセンスは、そうした問いに向き合うための、静かな土台をつくる香りです。


ミルラ  ── 終わりと再生を受けとめ、手放しを支える香り

ミルラは、癒しと同時に、死や埋葬と結びついてきた香りです。人として生き、苦しみ、死を経験する存在を象徴する香りだとされています。

古代では、その防腐性から、遺体を清め、守るためにも用いられてきました。古代エジプトでミイラの防腐処理に使われていたことは、よく知られています。

それは、死を遠ざけるための香りではありません。「終わり」を恐れることなく、尊厳をもって受けとめるための香りだったと考えられます。

温かく、ほのかにスモーキーで、深く大地を思わせる樹脂の香り。心の奥に触れ、手放しのプロセスを支えてくれます。

一年の終わりは、役割や期待、もう必要なくなった考え方を丁寧に見送り、新しい一年へと歩み出すための、大切な節目です。

ミルラは、古代から担ってきた役割を通して、年末という、終わりと始まりのあいだに立つ時間を、静かに支える香りだと言えるでしょう。

 

二つの香りがそろうとき  ── 年末の振り返りと手放し

フランキンセンスは、自分自身と繋がり、内なる声に耳を澄ます香り。  
ミルラは、終わらせ、次へ進むことを支える香り。


この二つが揃うことで、年末の振り返りと、新しい意図を迎え入れるための流れが自然と生まれます。



香りとともに行う、年末のジャーナリング

特別な道具は必要ありません。香りをそばに置き、自分と向き合う時間をつくるだけです。

基本のリチュアル

1. 空間を整える
 灯りを少し落とし、静かな空間をつくります。キャンドルを灯すのもおすすめです。


2. 香りを準備する
お手元のフランキンセンス&ミルラのブレンドオイルを用意します。使い方は、次の中から選んでください。

  • ティッシュに垂らす:1〜2滴垂らし、鼻に近づけて香りを感じます。最も手軽な方法です。
  • アロマカード(ムエット)に垂らす:専用のカードや厚紙に1滴垂らし、手元に置きます。
  • アロマディフューザーを使う:ディフューザーに3〜5滴垂らし、ゆっくりと香りを空間に広げます。


3. 香りを感じ、呼吸する

目を閉じて、ゆっくりと深呼吸を3〜5回。香りに意識を向けます。


4. ジャーナリングを始める
自然と心が落ち着いてきたら、ノートを開きます。香りはそのまま、そばに置いておきましょう。


    年末におすすめのジャーナリングテーマ

    テーマ1:今年の振り返り

    • 今年、心に残っている出来事や、自分自身を誇らしく思えることは何ですか?
    • 特に感謝したい出来事は何ですか?
    • この一年で、あなたの在り方や生き方は、どんなふうに変化しましたか?
    • この一年を通して、体験から学んだこと・気づいたことはありますか?
    • 今年の自分に、どんな言葉をかけたいですか?


    テーマ2:来年への意図を定める

    • 来年、どんな自分でありたいですか?
    • 来年、何を優先したいですか?大切にしたい時間や関係性は何でしょうか?
    • 手放したいものは何ですか?
    • 来年のテーマを一言で表すと?


    正解を探す必要はありません。香りとともに、浮かんできた言葉をそのまま書き留めてみて下さい。


    一年頑張った、今の私へ

    香りは、何千年も前から人々と深いところで結びつき、「大切なものを思い出すための道しるべ」であり続けてきました。

    古代では、尊い存在に捧げられてきた香り。その意味を改めて受け取りながら、一年を歩いてきた自分自身へと向けてみる。

    揺らぎがあっても、迷いがあっても、ここまで歩いてきたという事実に、静かに敬意を払う。

    そんな時間に、フランキンセンスとミルラの香りが寄り添います。


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