「心地良さ」で選ぶ香り


あなたは香りを選ぶとき、何を基準にしていますか?

「リラックス効果」「安眠効果」といった効能でしょうか?

ipsentiaは、香りは理屈で選ぶものではないと考えています。本当に大切なのは、あなたの心が「心地良い」と感じるかどうか。

ではなぜ、心地良い香りが大切なのでしょうか?このページでは、香りが脳、記憶、心身に与える影響を科学的に解説し、その答えを紐解きます。

 


香りが心に与える影響:感情と香りの密接な関係


私たちの五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)は、それぞれ異なる経路を通じて脳に情報を届けます。この中で嗅覚は特別な存在です。

香りの情報は、感情を司る脳の部分に直接届く独自の経路を持っています。その伝達速度も、非常に速いのが特徴的。

実際、香りが脳に伝わる時間はわずか約0.2秒以下と言われ、五感の中でも最速です。だからこそ、香りは私たちの感情に瞬時かつ深く影響を与えます。

ここで重要な役割を果たすのが、大脳辺縁系に属する扁桃体です。扁桃体は、感情を管理する「司令塔」のような存在で、情動や本能的な感情の処理に大きく関与しています。

他の感覚の場合、情報はまず「大脳新皮質」を経由して処理され、そこから大脳辺縁系に伝わります。大脳新皮質は、理性や思考を司る部分。このプロセスにより、感情が動くまでにある程度の時間がかかります。

しかし、嗅覚はこのプロセスを経ず、香りの情報がダイレクトに扁桃体に届きます。そのため、嗅覚は私たちが理屈ではなく本能的に「感じる」感覚であり、香りを嗅いだ瞬間、感情が湧き上がるのです

例えば、朝、淹れたてのコーヒーの匂いが鼻に届いた瞬間、ふっと心がほどける。柑橘系のフレッシュな香りが広がると、気分が晴れやかになり、活力が湧いてくる。森の香りに包まれると、心が落ち着いて深呼吸したくなる。

そんな経験はきっとあるのではないでしょうか。

これは、香りが扁桃体を直接刺激し、感情に働きかける力を持っているためです。嗅覚という原始的な感覚が私たちの心に与える影響は、想像以上に大きいのです。

 

香りと記憶の不思議な関係:プルースト効果


香りは記憶にも深く関わっています。

脳の大脳辺縁系には、記憶を司る「海馬」と呼ばれる部位があり、香りはこの海馬に直接アクセスする経路を持っています。そのため、記憶を呼び覚ます強力なトリガーとなります。

街でふと香った香水の匂いで、懐かしいあの人を思い出した。
冬至の日に柚子湯に入ったとき、幼い頃祖母の家で過ごした、温かい記憶が鮮明に蘇った。
例えば、このような経験はありませんか?これは、香りが感情と記憶の両方に同時に働きかけるためです。

香りが記憶や感情を瞬時に呼び覚ます現象は、「プルースト効果」として知られています。

嗅覚は感情の司令塔である扁桃体と、記憶の中枢である海馬に直接アクセスします。そしてこの二つの領域が同時に刺激されることで、香りは単なる匂い以上の存在となり、過去の記憶とその時の感情を強烈に呼び起こす力を持ちます。

このように、香りは私たちの感情と記憶を深く結びつけ、特有の「心に刻まれる」感覚を生み出すのです。


香りが体に与える影響:心身のバランスを整える力


香りは心だけでなく、体にも影響を与えます。

嗅覚を通じて香りの情報が偏桃体に届いたのち、「視床下部」という部分に信号が伝わります。

視床下部は、自律神経系と内分泌系という、体の機能をコントロールする重要な二つの系統を制御する領域です。

自律神経系は、呼吸や心拍、消化など、意識とは無関係に働く機能をコントロールし、内分泌系は、ホルモンを分泌することで体の様々な機能を調節しています。

香りの情報は、この視床下部に伝わり、自律神経系や内分泌系を介して、免疫やホルモンに影響を与えると考えられています。

例えば、現代社会で多くの人が感じているストレス。
ストレスを感じると、体は「交感神経」が優位になり、心拍数や血圧が上昇し、筋肉が緊張するなど、いわば戦闘モードになります。同時に、ストレスホルモンであるコルチゾールが多く分泌されます。

コルチゾールは一時的には体を守る役割を果たしますが、過剰な分泌は免疫機能の低下など、健康に悪影響を及ぼします。

ここで香りの出番です。

香りを嗅ぎ、心地よいと感じたとき、視床下部がリラックス信号を送り、「副交感神経」を優位にしてくれます。

副交感神経が優位になると、心拍数や血圧が落ち着き、筋肉の緊張が和らぎます。
筋肉の緊張が和らぐことで、血行が促進され、痛みや呼吸が改善するだけでなく、心身全体がリラックスした状態、つまり「ゆるんだ」状態になります。この状態は、精神的な安定や集中力、創造性の向上にもつながります。
また、コルチゾールの分泌も抑制され、体が本来持つ免疫力を保つことができるのです。

 

このように、香りが私たちの心と体に良い影響を与える仕組みは、科学的にも少しずつ明らかになってきています。

 

「心地良い」と感じる香りを選ぶことの重要性:個人の感覚を大切に

香りの恩恵を最大限に受けるためには、「自分が心地良い」と感じる香りを選ぶことが大切です。

不快な香りは、ストレスとなり、心身を緊張状態にさせ、リラックスを妨げることがあります。これは、脳が危険信号と受け止め、交感神経を刺激し、コルチゾール分泌を促すためです。

香りに対する感じ方は人それぞれです。 ラベンダーが好きな人もいれば、苦手な人もいます。

過去の経験や文化的な背景も影響します。幼い頃に嗅いだ特定の香りが、過去のトラウマ的な記憶と結びついていて、不快に感じるという場合もあります。

大切なのは、自分の感覚を信じることです。

「気持ちが穏やかになる」「気分が上がる」など、心地良さやポジティブな感情が生まれる香りを選びましょう。

「リラックス効果がある」という情報だけで選ばず、実際に香りを嗅いで、ご自身の感覚を大切にしてください。不快に感じる香りは心を落ち着けるどころか、呼吸を浅くしたり、体を緊張させたり、頭痛を引き起こしたりと、逆効果になる可能性もあります。

だからこそ、香りを選ぶ際には、他人の意見や一般的な効能にとらわれず、自分の感覚を大切にすることが重要です。

自分の直感や感覚を信じ、心から心地良いと感じる香りを選ぶことで、香り本来の力を最大限に引き出すことができるでしょう。

 

まとめ:心地良い香りが、あなたを最高の状態へ導く


香りは、私たちの心と体、そして記憶に深く結びつき、瞬時に、そして深く影響を与える力を持っています。心地良い香りは、感情を穏やかにし、大切な記憶を呼び起こし、心身のバランスを整え、私たち本来の力を引き出す手助けをしてくれます。

逆に、不快な香りはストレスとなり、心身に悪影響を及ぼす可能性もあります。だからこそ、香りを選ぶ上で最も大切なのは、他人の評価や一般的な効能に惑わされることなく、自分の感覚を信じることです。

朝、淹れたてのコーヒーの香りで心が安らいだり、柑橘系の香りで気分が明るくなるように、日常に心地良い香りを取り入れることで、心と体は自然と調和し、より良い状態へと導かれるでしょう。

ぜひ、自分の五感を通して「心地良い」と感じる香りを見つけてみてください。それは、日々の生活をより豊かに、そしてあなた自身を最高の状態へと導く、かけがえのない味方となるはずです。

 

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